他人に精子を飲ませるのが好きだった。遺伝子が僕の身体から誰かの身体に入り込み、中で消化され、糞便として排泄されるまでの過程の中に、もしかしたらと希望を宿すなにかがあり、それは僕と言う名のミクロなパーティカクテルが既存の抽象理論に霞んで、は…
卒制で『papa』ってアニメを作った。作って、ひと段落して僕は何者でもない自分と何者かになりたい黄昏が王国と名高い堅牢な檻を作って僕はそこで自らの将来の、その微かな煌めきにも似た情景を胸に抱き、しかし同時に襲い来る言いようの無い不安、拒絶され…
ハッピーな装いで歩く跨ぐ服を着て、愉快なセンチメンタル抒情風景緻密な心模様呻いて、ぐったりとした意味深な面持ちはおもねいて、夢にまで見た全景、雨はここに。窓の外からは雪がほのかに霞んで、凍えるほどの檻の中で、心だけが生きていて、僕は嬉しか…
あの天使はささやかな春めいた日差し、日差しのわけもなくうららかな午後、日暮れに用いた爛漫さを振りまいて、紐解いて、連打した。ゆえに愛はさざめく波のはるか上空にいつも夢にみた楽園を呼吸を刹那をたらしめて、掻き消して、連投する。インスタグラム…
新宿で知らない浮浪者を観た。その姿はぼろきれの、引きずった脚と常にたわごとを呟きながら天を仰ぎ、焦点の合わない目で今にも破綻寸前の朦朧とした意識を、いや、意識すらもうなかったのかもしれない。伸ばされっぱなしの髪は足元にまで到達していて、横…
僕はあの人が嫌いだった。嫌いで、心底に憎くて、でもそれは僕自身の弱さと言うか、情けなさというか、不甲斐なさみたいなものが折り重なって、ブレンドして、たまたま目の前のあの人にぶつかったというただそれだけの個人的な感情に過ぎないのかもしれない…
今敏の映画『パプリカ』を観たのは、僕が高校二年生くらいの時だった。最初は意味がわからなかった。インターネットで転がっていた当時は違法とかまだ認識が薄い時期のアングラサイトで流通している邪悪なデータ、僕はそれを好奇心から閲覧した。とてつもな…
画面を見つめ、スクロールをする。指は、辿々しい一切の旋律を、奏でて、愛でて、時には慈しむ行為を僕という自分自身にしていた。自傷行為寸前の爪の跡、燃ゆる火蓋に切って落とされた瞼は、アンニュイな僕の調べを、いっそう無意味なものとしていた。無意…
私の大学には二人の天才が居て、一人は私だったのだけど、もう一人は別格だった。その子は意味もわからないくらいに作り出すものがきれいで、そして意味も分からないくらいにだらしなかった。色んな意味で、他人を怒らせるのが上手で、恐らく本人は意図して…
人生の辞め時がわからない。終着点?閉店……真っ赤なサンタクロースの衣装みたいに、わざわざ『品薄』とかでかく書いてあるその文字を冷静に眺める私と、印象だけで捉える私の二人が混在しているのがわかる。別に必要ないもののはずなのに、どこかで買わなき…
彼は存在が大きくて、別に大きいとかって理由で好きなわけでは全然なかったけれど、でもそのかすがい、寄る辺しかない感じ、甲斐性、そんなものが当時の僕には魅力的に思えた。彼はいつにもまして方がなだらかで、夢見心地?になるくらいの微睡みを瞳の中に…
とある人の訃報を聞いた。それは自分にとっては大したことのない、他愛もない、別に造作もなければ感慨もない、ありふれた日常の出来事のはずで、しかし私にはそのニュースを聞いた時に、腹の底が冷える感じ、他人事とは思えない寒さを、身体の芯から感じ取…
鮮明な思いに身を置き、淀んだ空気を目一杯に吸うと、いつかの空気が冴えて見える。感情は、言ってしまえばぼくの大差ない憧れをその手に抱いて離さないものだ。いっぱしの写真家の僕を、あなたは認めてくれたけれどそのぎこちなさ、感慨、思いに耽るいくつ…
出会った。真っ赤な画面に静止し続けたおよそ五分、五分の間におよそ人生の全てが、構築されてきた全ての基盤が、音を立てて崩れた。崩れて、人の合理主義だとか、価値観の差異なんてものは、何でもないのだと知った。 あの夜に見た光景が忘れられず、でも誰…
今までずっと自分のことをロジカルだと思っていたんだけど、最近打ちのめされることがあった。 「がみにゃん、全然ロジカルじゃないよ?」 唐突に、友達にそう言われた。なんで今まで気付かなかったんだ、とまで言われた。そうなの?って驚いたのと同時に、…
そのブログが好きだった。客観的に見ればがむしゃらで、未成熟で、過剰。つんのめっていて、しんどくて、その癖に極度な面倒くさがりを隠そうともしないふてぶてしさもあって、正直目に余るところもあった。けれど、そんな人間臭いところが好きだった。どう…
2024年は幸先がすこぶる悪かった。思えば年末から、その系譜は紡がれていたのかも知れない。 大晦日、私は知人からiPadを譲り受けることになった。元々自腹で買う予定だったお金が浮いたので、私はその足で電気屋に行き、新品のapplepencilを買った。純正品…
gammy-nyan.hatenablog.com 2019年の秋ごろから書き始めたこのお話が、ようやく終わりました。誰が読んでくれているのかもわからず、なんのために書いているかもわからず、ただ鳥肌が立つように打った文字の羅列が、このような物語を生みました。 それが何だ…
春、私たちは卒業式を迎えた。その日は卒業生たちが思うがままに仮装をするのが恒例行事となっている。私も準備をする意識はあったのだが、どうにも重い腰が上がらず、前日にようやく家に残っていた布を縫って簡素な帽子を作った。特にテーマがあるわけでも…
二月、私とフクロウくんは私たちが出会うきっかけとなったフラダンス部の女の子にお礼を言うために、彼女をご飯に誘った。大学からほど近い喫茶店で待ち合わせる。その喫茶店は名前の通りに落ち着いていて、店内にはアンティークの家具とバーカウンターが並…
私たちはその後、何度かセックスをした。2人で寝そべってもまだ余裕のある大きさのベッドの上で、舌を絡ませたり抱き合ったり、いわゆる男女が行うようなことは一通りやった。そうすることが幸せだったし、相手が求めてくれることに応じることは私の中の欠け…
人間は、好きでもない人をわざわざ好きになろうとはしないし、誰かを好きになりなさいと脅されても妥協できないものだ。皆に理想があり、王子様やお姫様がいて、それで世界は絵本のような教訓を信じて回っている。それなのに、どうして働くということについ…
大学4年の終わりに、私は大学を休学することを決めた。理由は病気のことや、家族関係、就活のことなど様々だ。大学5年生という聞き慣れない言葉は、私がいつの間にかレールから外れ、落伍者になったような、そんな嘲笑めいた響きを持って私にのしかかる。 何…
「家族の話をしよう。」 雑多な室内。机上には薄紅、白、黄の花が描かれた小鉢が並び、茶びた牛肉、豆腐、枝豆を乗せてこじんまりと並んでいる。手元には透明なジョッキにたっぷりのビールが注がれており、その泡は時間が経っているせいか萎んでほとんど見え…
烏がモミジの葉をついばんだ。人は苦しいとゴム風船のように縮んで、つま先から押しつぶされるようにして嗚咽が漏れるのだ。ぐにゃぐにゃと変形した神経の一部が、外気と布団の気温差に気圧されて縮こまる。痙攣とまではいかなくても、身の震えを自分で抑え…
耳元で蝿が飛び回る音がして、頭の中は執拗に掻き乱される。悲鳴にも似た地の底から唸るような響きが沸き上がってきて、私は私の感情に整理をつけ始める。これは怒り、これは悲しみ、これは慈しみ……サインペンで印をつけるみたいに身体の中を高速で駆け回る…
「皆さんには黙っていましたが、私はゲイです。」 大学の工芸棟への続く広い通路を横断するように、生徒たちは列を作り、地べたに座り、私の言うことに耳を傾けていた。私を中心として波状に整列する様子は、真上から見たらまるで鉄球に吸い付く砂鉄のように…
大学3年の6月。梅雨に差し掛かり、校舎にも薄紫や青色の花が咲き始めた頃。私たちは『紫陽花』という名前の他専攻を交えた飲み会に参加していた。 『紫陽花』は、デザイン科3専攻だけではなく、工芸や彫刻といったファインアートの学生も参加できる。土曜の…
『アイデンティティ・ボックス』直訳で自分らしさの箱。私の大学で、3年次の最初に言い渡される課題だ。 自分らしさをテーマに作品を作る。タイトルに箱とは付いているが、別に箱にしなくてもいい。メディアも自由で、形状・大きさも自由。とにかくなんでも…
土曜日。私はボンちゃんとの約束通り、20時にお店に着くように向かった。大学近くの下宿から、徒歩30分で着く繁華街。途中坂道があるので帰りは少し辛いが、徒歩で向かわなければ行けないのは冬のシーズンだけだろう。雪が無くなれば自転車を使えるので、慣…